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一輪の花(BLEACH)

一輪の花(浮竹十四郎)第一話

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浮竹は床に就いていた。
熱に浮かされた身体が重い。

藍染の裏切りで騒然とした護廷十三隊の建て直しに奔走した疲れが一時に出た様だった。元々病身であるのに、浮竹は無理を重ね過ぎた。だが四十六室全員惨殺の後、山本元柳斎重國がすべての権限を行使するにあたり、補佐は浮竹と京楽の役目であった。己の身体を労わる余裕もないままに、激務に身を投じるしかなかった。

仰向いたまま顔の前に手を翳してみた。斬魄刀を解放する度に削られていく命が、最近では誤魔化し様もなく切実に肌身に感じられる。それでもまだ刀は握れる、それだけが今の浮竹の心の支えであった。
(これでは、卍解すら、もはや危ういかも知れんな・・)

襖の向こうから女の声がした。
「浮竹隊長、薬湯をお持ち致しました」
「ああ」
浮竹は起き上がり、枕元の上衣を肩に羽織った。堆朱の盆に大ぶりの信楽焼の湯のみを載せて入って来たのは、十三番隊の平隊員瀬能千雪(せのう ちゆき)であった。古風な顔立ちの美女である。死覇装に包まれた華奢な身体は楚々とした風情があった。
「お加減は如何ですか」
「昨日よりは、大分良い」
苦い薬湯に顔をしかめながら、浮竹は答えた。千雪は床の傍らにいざり寄り、空になった湯のみを受け取った。

この女は山本総隊長からの預かり者だった。出自を総隊長に尋ねずとも、立ち居振舞いを見れば、格式のある家の出と知れた。彼女の斬魄刀は特殊であった。最上級の大虚でも一時とはいえ力を封じられるのだ。しかしそれ以外は鬼道も剣術も並であった。普通の任務にはあまり向かない者であった。
「ワシの孫娘のような者じゃ。京楽よりお前の所の方が良いと思ってな」
山じいが何を心配していたか、それを思うと浮竹は苦笑するしかない。今や千雪は浮竹の秘密の恋人であった。

護廷十三隊に所属する者でも所帯を持つ者もいるが、若い頃から病弱だった浮竹はそのような考えは捨てていた。それだけにこの女を愛しいと思い、深い仲になってしまった事が、自身にも驚きであった。自分がこの女には初めての男だと知り、うろたえたのは浮竹の方であった。女はそれを自然の理のように受け入れていた。

梳き解いた黒髪が褥に広がり、顔を埋めると百合の花の香りがした。二人の情が高まると、闇の中に浮竹の白く長い髪と千雪の黒髪が混じり合い乱れ舞った。それは傍で見る者がいれば妖しく心躍る光景であったろう。男にしては青白い浮竹の肌よりもなお白く、千雪の肌は漆黒の夜でも光を帯びて見えた。病の身の何処に、これ程の愛欲があったのかと思う程に激しく、浮竹はこの女を愛した。身体に障ると解っていても、浮竹は我慢する事はやめていた。千雪はそれを咎めだてする事はなかった。したり顔で何か言ったり母親めいた事をしようとしない。それが浮竹には好ましかった。物自体余り言わぬ女であった。

千雪の現世への駐在任務の案を仙太郎が持って来た時、浮竹はあえて反対はしなかった。半年の別れを寂しくは思うとしても、それは職務の上では言える事ではなかった。駐在場所は例の空座町に隣接していた。
「私に勤まるでしょうか」
千雪は不安な顔をした。
「近くに朽木もいる。困った時は頼るがいい」
浮竹は隊長の顔で言った。
「お前なら大丈夫だ」

千雪は現世に旅立っていった。

義骸とはこれほどに不自由な物なのか。千雪は戸惑っていた。
「すぐに慣れるっすよ」
浦原喜助はそう言い、千雪を店から送り出した。浦原が一瞬妙に粘る目をした、千雪はそう感じたが、この海千山千の男の思う事など千雪に解る筈もなかった。

店を出てしばらくして、千雪はますます強まる身体の異変を感じていた。歩いているだけなのに身体が重い。息が苦しい。
(どうしたのだろう・・)
目眩がして、千雪はそこに倒れこんでしまった。急ブレーキの音がした。車は千雪の直前で停まった。慌しい動きで運転席から降りて来たのは、眼鏡をかけた男であった。神経質そうに眉間に皺を寄せ、男は意識のない千雪の身体を抱き起こし、手首の脈をみた。そして千雪の顔を見て、驚きをあらわにし、その顔が蒼褪めた。男は千雪を抱き上げると、自分の車の後部座席に横たえ、外から隠すように毛布を掛けた。車は走り出した。向かった先は空座総合病院、男が院長を務める病院である。

男の名は石田竜弦という。

(続く)

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