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魔界都市シリーズ

魔界都市日記 十二

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◯月◯日

吸血鬼の青年が、いきなりがっくりと膝を着いた。
「夜香さん」
私は急いで助け起こそうとした。ここはまだ危険-真の安全など存在しない魔界都市の中においても、「危険地帯」と呼ばれる場所なのだ。ほんの数秒の気のゆるみが、死を招く。

彼の胸のあたりがみるみる赤く染まってゆく。先程の少女との戦いの傷が、思ったよりも深かったのであろうか。
「これしきの事で、情けない」
顔を上げた青年と目があった。汚れた欲望を恥じる心と切なさが、入り混じるその瞳。軽く開かれた口元が何を欲しているのかを、私はすぐに理解した。私にそれを見抜かれた事を察して、青年は苦痛に耐え切れぬかの如く、目をそらし低い声をもらした。この誇り高き青年は、己の欲求の奴隷になるまいとしていた。

私は破れかけたブラウスの襟元を引き裂き、彼の隣に膝をついた。目を閉じ、やや上を向いて言った。喉元は青年の前に無防備にさらされた。
「貴方の欲しい物を、受け取って下さい」
「いけない・・そんな事をしては」
青年の顔が傷の痛みではない苦痛にゆがんだ。端正な面立ちであればあるだけ、その苦痛の表情が際立ち、荒れすさんでゆく彼の理性の下にあるものを暗示していた。

「貴方は私を救ってくれた。でも、まだあの少女が消えたとは思えないの。このままでは二人ともここで朽ち果てる事になるわ」
街を包む闇は確実に濃さを増していく。空気に含まれた妖気も。

脳裏のどこかで何かが閃いた。何かが。
「失われた私の記憶、その中のひとつが貴方の事なのね」
青年は目を見張った。
「では、本当に覚えていないのですね、何もかも」
「『初め』は、覚えていたの。でも、段々と忘れていったらしいの」
私は青年を抱き起こした。
「貴方は覚えているのね」
「忘れません。私は貴方に救われたのだから。だから貴方の・・」
「お願い、もう一度、私を助けて。貴方の渇きを私で」
青年は、ようやっと頷いた。

急速に薄れていく意識の中で、私は吸血鬼の青年のつぶやきを聞いた。
「だから私は、貴方の血の匂いを知っていた・・・」


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