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魔界都市シリーズ

魔界都市日記 十一

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◯月◯日

硬い物音がした。ばらばらと何かが壁に当たる音がした。少女は私のそばから飛びすさった。 体が軽くなった。回復した視界の中で、少女はふわりと宙に跳んだ。少女は叫んだ。
「何故だ、同じ呪われた命を持ちながら」
身じろぎした私の手に何かが触れた。鉄のくさび、先程の音の正体はこれだったのだ。

少女の背後に黒い影があった。その黒い三つ揃いの背中には黒い大きな羽根が広げられていた。 戸山住宅の長老の孫であった。
「お前が無差別に人を殺めたからだ。その為に、我々一族が嫌疑を掛けられた」
少女が笑った。それは銀鈴の音を残しながらも、もはや人ではない事を表わすかの如く高くあたりに響き渡った。
「何を言う、ここは魔界都市。我等がここを支配して何の不思議があろう」
青年は胸を張り、言い放った。
「魔界都市にも成約はある。我等一族は、ここに共存し生きながらえる事を選んだのだ」
「腰抜けども奴!」
少女の白いたもとが激しく振られ、光の帯が青年に襲いかかった。光に包まれた青年はがっくりと膝をついた。
(夜香さん!)
私の叫びは声にならなかった。

夜を越えて押し寄せる人工の灯がこの危険地帯にも幾つか生き残っており、その少女の姿を闇の奥から浮き出させていた。
「口ほどにもない。これが一族の要とは」
少女はこちらを向いた。その白い面には邪悪な微笑が浮かび、口は赤く裂け、金色の瞳はますます輝きを増していた。少女は片手を差し出した。
「おいで、今日の獲物はお前だ」
必死で逃げようとしたが、身体は思うように動かない。ここで私は死ぬのか。

黒い固まりが少女を貫いた。 少女の身体がぐらりと揺れた。
「お・・おのれ・・!!」
ぎらぎらと光る憎悪の眼が、背後で立ち上がった青年に向けられた。
「以前にもお前のような者がここに来たが、お前の方が小物だな」
青年はそう言うと、第二波を放った。少女は絶叫した。その体は飛散して闇に溶けた。

青年は私に手を貸して、立ち上がらせた。
「貴方の血の匂いがした・・・」
その口調には苦痛をこらえる様な何かが混じっていた。自分の負傷の痛みではない。青年は私の破れた肩口ににじむ染みを見ていた。己の嗜好への苦痛である。私は思わず、片手を自分の喉元に当てた。青年は私を安心させるかの様に、ゆっくりと首を左右に振った。
「かつて私は貴方に助けられた」
「夜香さん、それは」
青年は自分の羽織っていたマント脱ぎ、軽く払うと私に着せかけた。
「お送りしましょう」
「でも、私にはもう」
「ドクターの所へ」

廃屋の影に、危険地帯から去る私達を見守る、夢見るほどに美しい黒いコートの姿があった事を、その時の私は知らなかった。


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