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魔界都市シリーズ

魔界都市日記 十

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◯月◯日


空が赤いと泣いてしまうの・・・

少女はそういうと、白い着物のたもとで、そっと目頭を拭った。魔界都市の空にも夕暮れはやって来ていた。赤く染まる西の空を少女は見ていた。黒髪が夜の気配を含み始めた風になびいていた。

空が赤いと泣いてしまうの・・・

か細い声は銀の鈴の音を思わせた。その声は、こうして崩れかけた壁に半身を持せかけた私の所までも届くほどによく通った。声が大きいのではなく通るのだ。少女は何時現われたのであろう。いくら私であっても、半径10m以内にならどんな些細な気配でも感じとれる位には感覚が鍛えられていたはずなのに。

”危険地帯”の廃墟の壁に、私は半身を持せかけていた。肩の傷の痛みが激しくなった。出血がまだ完全には止まらずにいた。流れ出る血は所々破れた衣服を伝い、赤黒い染みを広げていった。疲れ果ててはいたが、私の神経は研ぎ澄まされたまま、間断なく周囲の気配を探り続けていたはず、なのに。

少女はこちらを向いて、にっこりと微笑んだ。私も弱々しく微笑み返した。そうして近付いて来ると、少女の朱色の唇から甘いがどこか空ろなな言葉があふれだした。
「わたしはどこへも行く所がないの。だからここに来たの」
黒い髪がさらさらと濃くなりゆく宵闇に溶けた。風はもうすでに夜の風だった。

少女は私の隣に腰を降ろした。夜が新宿を支配していく。
「あら、怪我をしてるのね」
ごく当たり前の言葉なのに、少女が口にすると不可解な不協和音が混じりこんでいるように聞こえた。夜は傷ついた私の体も心も冷やしていった。ふと気弱になり、この得体の知れない少女にすら頼りたく思う自分を感じた。
「私もいく所がないの」
「では、一緒にいきましょう」
少女は私の顔を覗き込んだ。その瞳は金色に輝いていた。魔性の瞳だった。

急速に私の体から力が抜けていった。必死でこらえようとしても、まぶたが目に覆いかぶさろうとするのを阻止する事は出来なかった。薄れていく意識の中で、少女は「生きましょう」と言ったのか「行きましょう」と言ったのか、どちらだったのだろうとぼんやりと考えていた。
少女の感触が喉元に感じられた。私は少女が何者か悟った。 そうしてこの後の来るであろう官職を、自分が知っている事を思い出した。

そう遠くはない記憶の中に・・・

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