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摩天楼に風は吹く(TIGER&BUNNY)

摩天楼に風は吹く(SKY HIGH)4

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「いらっしゃませ」
彼が花屋に足を踏み入れた途端、明るい声がした。彼は目を見張った。声の主は彼女だった。彼だと気がついて、彼女の顔に微笑が広がった。明け方に開く白い花のような。彼はそれを美しいと思った。
「この前は、ありがとうございました」
高鳴る胸を抑え、彼はようやく言った。
「いや、大した事はしてない」
彼女はもう一度微笑むと、職業的な態度を取り戻し、彼に尋ねた。
「プレゼントですか?」
「ああ」
彼は曖昧に頷いた。彼女の目に悪戯っぽい光が煌いた。
「恋人に?」


君の為に、とは今更言えなかった。しかしここで帰るわけにもいかない気がした。
「花の事は良く解らない。君の好みで選んでくれないか、君の好きな花を」
彼女は怪訝な顔をしたが、すぐに軽く会釈をして、店の中を見渡した。こじんまりとした店だった。手前には、鉢植えや出来合いの花束が彩りよく並べられ、奥には温度が調整されたショーケースがあり、贈答用の蘭や薔薇の大輪がしまわれていた。彼女の後ろのテーブルに、無造作に薔薇の束が広げられていた。柔らかそうな花弁は、まさに薔薇色で、重なり合う奥に薄い檸檬色を隠していた。
「これでいい」
彼はその薔薇を一枝掴んだ。


「あっ!」
二人は同時に叫んだ。鋭い痛みに、彼は慌てて薔薇を離した。
「それは、まだ棘を取っていないの」
彼女は彼の手を取った。彼の指先に、血の玉がみるみる膨れ上がっていく。
「大変だわ」
彼の大きな手を、彼女は両手で捧げ持った。そして傷口に唇を押し当てた。傷の痛みよりも唇の柔らかな感触が、彼には強くはっきりと感じられた。先程の薔薇の花弁に似た色の唇が、人さし指、中指、薬指と移動していった。彼は息を詰めてそれを見ていた。


「これで、大丈夫」
傷口がみるみるうちに塞がっていく。痛みも消えた。
「君はNEXTなのか」
「この位の小さな傷を治すのが精一杯。あってもなくても良い程度の力ね」
「能力は能力だ。どんな力でも卑下する必要はない」
「ありがとう」
「お礼を言うのは私の方だ。ありがとう、傷を治してくれてありがとう!」
彼の熱の入り過ぎた言葉に、彼女は少し戸惑った様子を見せた。視線がテーブルの薔薇の方へと移動した。
「あの薔薇がお気に召したのなら、花束にしましょうか?」
「君は、あの花が好きかい?」
彼を見上げて、彼女は言った。
「好きよ」


棘を取り去った薔薇達は、白い薄紙に包まれた。水色と銀のリボンが根元に巻きつけられた。支払いをすませ、彼は花束を受け取った。
「またのご来店をお待ちしております」
少しおどけて、彼女は頭を下げた。
「また来るよ、必ず来るから」
彼は花束を抱いて、店を後にした。


通りを歩きながら、彼は考えていた。
(このまま、帰るわけにはいかない)
心を決めると、彼は踵を返した。戻って来た彼に、彼女は驚いた顔をした。
「もう、来て下さったの?それとも忘れ物?」
「いや」
彼は大きく息を吸った。彼は思い切って言った。
「この花は、君の為に買ったんだ」
彼は彼女に花束を差し出した。彼女は花束を受け取ると抱きしめた。
「うれしいわ、ありがとう」


その花の花言葉を知ったのは、ずっと後の事だった。彼女が教えてくれたのだ。幸福な時間、短くとも深く豊かだった時の中で。

”わが心は君のみが知る”

それが、あの薔薇の花言葉だった。


(To be continued,may be....SKY HIGH)



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