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魔界都市シリーズ

魔界都市日記 六

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◯月◯日

その日は夏至だった。

一年の内で最も太陽が力強い日。その日の為に、あらゆる力の源は呼応する。魔道士も魔術師も闇に沈む妖術師達も、その活力を各自の神殿に召喚するべく儀式を執り行なう。年に一度の大いなる流れが移り変わる時。アストラルの世界で多くの力がせめぎあい荒れ狂うその流れに、未熟な者はたちまち飲み込まれてしまうだろう。

師は私に留守番を言いつけ、何処へか出かけていった。

意識を閉じていても、力の嵐が入り込んでくるのを防ぎきれない。さすが魔界都市、今迄いたどこよりも、そのうねりは激しかった。こういう時は体中の震えが止まらなくなる。私は来客用の安楽椅子に身を投げ出して、耐えていた。もしもその日でなければ、侵入者にとっくに気づいていたはずだった。

何かの気配がした。「誰か」ではなく「何か」?
私は意識を失った。

声が聴こえた。
「ここは・・安全だが・・を・・彼女自身が理解する必要が・・」
よく聞き取れないが、その冴えた冷たい月の光を思わせる声は。私の目覚め切らぬ暗い脳裏にすらあざやかに浮かび上がるその白い面影は。

その姿をその声を間近にするだけで、すべてが癒されてしまうとしても、何の不思議があろう。人外の果てからここにやって来た魔界医師、何ゆえに彼はここへ?そう、何故この魔界都市に。しかしそれは私自身にも言える事。魔が呼ぶその呼び声に耳を傾ける者も又、魔性の申し子なのであろうか。だが悪しき者善き者は相対的であるのはどこでも同じ。 ここではその秩序を守る者が・・・

私は気がついた。これは私の意識ではない。私の中で思考しているこの物は。まるで子守歌の様に、流れ込むその意識は。
(何が起きたの?)

「気がついたかね?」
白い美貌が覗きこむのが見えた。ここはやはりメフィスト病院。
「ええ、もうすっかり気分もよくて」
”私”が微笑み、答えるのが感じられた。しかしそれは”私”ではない。
(誰か・・気がついて・・!)
私は心の中で必死に叫んだ。見る事も感じる事も出来るのに、自分の意志では何もままならない。
「それは良かった」
白い顔が頷き、流れる黒い髪に半ば隠れた。ローブのきぬずれの音がした。ドクターが行ってしまう・・・絶望の淵が目の前にひろがる。私は何者かに支配されている・・・誰か気づいて!

「しかし君が良くても、その体の持ち主は良くはあるまい」
豊かな黒髪がさらさらと流れ落ちた。それは月光の名残の如き艶やかさを帯びながら、ゆるやかに私に掛けられた白いシーツに広がった。まるで私を包みこむかの様に。月の光は冷たいばかりではないのだ。いにしえの昔、病人の治療法として「月光浴」が好まれたという。
「出ていきたまえ」
ドクターが断固とした口調で言い放った。魔界医師は銀色の細い針金を私の額に刺した。侵入する感覚はあるが痛みはない。私の意識の中に悲鳴が木霊した。断末魔の叫びであった。
「ドクター・・・」
感謝の思いを込めて開いた口から出たのは、まさしく私の言葉であった。

ドクターはすでに白い後ろ姿を見せていた。
彼は完治した者には用はないのだ。特に女には。

(つづく)

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