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魔界都市シリーズ

魔界都市日記 五

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◯月◯日

突然の雨に見舞われて、私は大久保通りにある喫茶店「伯爵」で雨宿りをする事にした。

この店に一歩足を踏み入れた途端、私はひどく場違いな自分に気付いた。日本語はまったく聞こえない。同じ東洋の種族であっても大陸の言葉が耳朶をうつ。彼等の視線をさける様に、店の隅の窓際の席に着いて薄汚れたメニューをひ広げていると、韓国人のボーイが、かたことの日本語でオーダーを取りに来た。アイスコーヒーを頼んで、買ったばかりの本を開くと、店の中にかすかなどよめきが沸き起こった。

皆、入り口の方を見ている。

私の席から店の入り口が良く見えた。入ってきたのは男女の二人づれだった。男は黒いコートをまとった青年だった。その美貌には、性別も国籍も関係なく魅せられてしまう様であった。どよめきの原因の半分はその美影にあった。うす暗い店内に、そこだけほんのりと灯がともった様な白い顔は、客達の反応など気にかけてはいない様だった。私は彼が誰であるかを知っていた。

あとの半分はもう一人のせいであった。女ではあるが、信じられない様な肉塊が歩いていた。何をどうすれば、あの様な身体になれるのだろう。客達の視線は、生物学的とでも言うような好奇に満ちていた。
(「美女と野獣」という言葉があるけれど、この場合は逆ね)
私は心の中でつぶやいた。

二人は私の隣のテーブルについた。私は窓の外を見ていた。もしもそちらを見たら最後、彼から視線をそらす事は不可能だと悟っていたから。女はパフェの容器を瞬く間に幾つも空にしていた。
彼はソーダ水のストローを弄んでいた。のんびりとした声が聞こえた。
「そこを何とかならないかなぁ」
「あたしも商売だわさ」
指すらも丸まっちい女は、パフェにかぶりつきながら答えた。

事件が起きたのは、その時だった。

一目でヤ○ザとわかる酔った男が、ふらついて彼等のテーブルにぶつかったのだった。
「この野郎、足かけやがったな」
男は黒いコートをまとったままの彼に向かって吠えた。
「僕は何にもしてませんよ。あなたが酔っているだけでしょう」
彼は静かに答えた。男は尚も何かをわめこうと口を開きかけたが、突如その顔に恐怖が浮かんだ。男はいきなりぎくしゃくとした動きで、外へ出ていった。二人は何事もなかった様に話を再開した。

窓から見ていると、今の酔漢が、降り頻る雨の中をよたよたと歩いてゆくのが見えた。まるで何かにあやつられてでもいる様に・・その先には交番があった。 窓ガラスに映る彼の横顔にどこかいたずらをした子供の様な微笑が浮かんで消えた。


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