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魔界都市シリーズ

魔界都市日記 四

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◯月◯日

今日は満月だった。眠れる魔性が目覚めるのか、夜気はざわめきに満ちていた。戸山住宅の夜は、不思議な活気にあふれていた。私は胸の銀の十字架に軽く触れてみた。ここはかえって外よりも安全な気がしていたのだった。ここには一つの危険しかないが、ここを出れば無数の危険があるのだから・・・

高田馬場から箱根山近くの家まで、戻る途中の近道に、ここを抜けていこうと思ったのだった。私は空を見上げた。
(満月・・・きれい・・・)
不意にその月が黒い影に遮られた。その影は大きなコウモリの形をしていた。羽ばたきが聞こえた。
「お嬢さん、どちらへ行かれるのですか」
黒い礼服姿の青年が目の前に立っていた。
「夜香さん」
「これは、偉大なるあの方のお弟子さんではありませんか。今お帰りですか」
「ええ、魔法街から」
吸血鬼の長老の孫は空を見上げた。
「満月だ。女性の一人歩きは物騒だ。お送りしましょう」

肩を並べてしばらく歩いて行くと、はるか彼方に白い影がぼうっと現われた。それは月の光のいたずらの様にも見えた。傍らの長老の孫は動じる気配もなく、その正体をすぐに理解した様だった。
「少し遅くなってもかまいませんか?ここに来てまだ日の浅い貴方に、見せたい物がある」
彼は先に立って歩き出した。白い影の後を追うかの様に。

そこは小さな児童公園の入り口だった。さびれたその場所にも今宵の月は明るい光を満たしていた。その中央に白い影は立っていた。月光がその影を形作ったかの如く、それは光り輝いて見えた。その人物は・・・

傍らから低い声がした。
「そう、魔界医師ドクター・メフィストです」

ドクターは一人たたずみ、満月を見上げてかすかに微笑んだ。その微笑は美しかった。それは、神聖と邪悪の境界にあやうくふみとどまり、見る者の胸をかきたて、その唇より溜め息をもらさせずにはいない微笑だった。月光の醸しだすエーテルの流れの中で、なびく髪は不可思議な動きをし、その豊かな髪に縁取られた美貌を、ますます際立たせていた。人は見るであろう、この世の魔術、この世のあやかしのすべてを持ってしても創造する事は能わぬその微笑を。

彼の回りに、蛍の様な幾つもの青白い光体が、円を描きつつつどい集まってきた。
歓喜と感嘆の声が宙にこだましていた。

   ドクター・・ドクター・・・
   この時を待っていた・・・
   我等を癒す唯一の・・・
   ドクター・メフィスト・・・・
   ドクター・・・・

声はついに合唱となった・・・

「ドクターが診るのは、人間だけかと思ったわ」
ぼんやりと夢見心地につぶやくと、隣から皮肉混じりの声がした。
「人間、ね」
はっとして、私は傍らの吸血鬼の青年を見た。
「ここは魔界都市。我等、呪われた生を受けし民ですら憩う所。その魔界の医師たる者が、人外の者をいやすのに、何の不思議がありますか?」
「そう、そうね。ここは魔界都市」

満月はますます輝きながら、新宿を照らしていた。


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