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魔界都市シリーズ

魔界都市日記 三

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◯月◯日

職安通りからしばらく行った児童公園で、不思議な物を拾った。大人のこぶし程の大きさの宝石である。透明な光の結晶の中に七色の炎がきらめいていた。石にくわしくない私でも、逸品だとわかる。しかし・・それよりもその妖しくゆれる炎が何か強力な力を放っているのを感じた。見ているだけでめまいがしそうだった。私はそれを師の元へ持ってゆく事にした。

「君はこれを手にして、何か感じなかった?」
師は黒いビロウドの布の上の宝石を、興味深げにながめていた。
「めまいがして倒れそうです。なんて不思議な光とパワー」
「よく卒倒しないでここまで来れたね。私ですら触れるのは遠慮したい位だ」
「・・・悪しきもの、なのですか?」
私の問いに師は眉間に皺を寄せて、しばらくしてから答えた。
「それは・・・その答えは私には言う事は出来ない。ここは『新宿』だからね」
その時、電話のベルが鳴った。

区役所跡に向かう途中にバッティングセンターがあった。緑色の網に覆われている。もちろん普通の網であるわけがない。特殊な化学繊維で編まれている。百万馬力のサイボーグがざらにいる街だ。バットもボールも特別だろう。新宿区役所は「魔震」の以前に一度だけ訪れた事があった。高層ビルは役所というよりも会社の様で、その当時ですら雑多な人種があふれ、数か国語の標示がされていた。区役所の正面には昔のガス燈を模したランプがあって、その中でちろちろ燃える炎が不気味に思えたものだった。今はその場所は白亜の建物になっている。”メフィスト病院”である。

「はい、院長からうかがっております」
用件と師の名前を言うと、受付嬢は事務的な礼儀正しさで言った。
「失礼します」
受付嬢がライトペンの様な物の先を私の眉間に押し付けた。
「ではお部屋までどうぞ。ただいま道順はお教え致しましたので」
「え?今ので?」
「ただし往復一回のみでございます」
彼女はにこやかに応じた。

初めての院内を、まるで知り尽くしているかの様に、私は進んでいった。そうして「院長室」と書かれた扉の前にたどりついた。
「入りたまえ」
ノックをする間もなく声が響いた。扉がひとりでに開いた。

中は暗闇で、ただ一条の光が、巨大な書物机に陣どる人影の上に落ちていた。白いローブに漆黒の髪がゆるやかに流れた。立ち上がったその人物は言った。
「わざわざ届けてもらってすまなかった」
その声は天からの啓示に思えた。私は光を見た。影を見た。そして輝きを見た。それ等のすべての純なる美を集めた姿・・ドクター・メフィストであった。その美は今、私の傍らにたたずんでいた。無意識のうちに、私はあの石を差し出していた。ドクターはそれを受け取った。この宝石にはこの白き手こそがふさわしい。見よ、石は更に輝きを増し、陶酔した様に、その繊手に身をゆだねているではないか。
「確かに本物だ。知り合いがこの在処をつきとめたので連絡したのだが。拾ったのが、彼の弟子でよかった」 
あの電話はドクターからの物だったのだ。師はすぐに病院へ向かう様に私に命じた。
「ドクター・メフィスト」
私の声は掠れていた。稀なる美を備えた顔がこちらを見た。私は膝に力を入れねばならなかった。そうでなければ、そのままそこに崩れてしまいそうだった。
「その宝石は何ですか?」
「これは『夢の石』だ。人の見た夢がなんらかの作用で、この様な石になるのだ」
「その様な病気があるのですか」
「これは『病気』というよりも『現象』だ。ここでは何でも起こりうる」

部屋を出かけて、私はふと聞いてみた。
「それは誰の夢なのですか?」 
白い姿は闇に溶けていた。答えはなかった。諦めて部屋から出て歩き出そうとした時、声がした。あの白い美貌の主の声が。
「私の夢だ」
背後で扉の閉まる音がした。振り向くと、もうそこには院長室の扉はなかった。


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