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魔界都市シリーズ

魔界都市・紫煙の報復

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私はゴロワーズに火を点けた。ここは高層マンションの最上階。私は眼下に広がる街を窓から見下ろした。きらびやかな高層ビルと荒廃した土地が混在する『新宿』の街並みを、夜の闇が染めて行く。煙草の強い香りの中で、その風景は異国の街に変貌する。私の暮らした幾多の街。さざめく悪意、疲れた希望、陶酔と苦痛のカクテルの中で、人々は日常を怠惰に或いは何かに追われるかの如くに生きていた。

紫の煙を吐き出しながら、私は今日の出来事を思い返す。嫌な患者だった。
「魔女というから、婆さんかと思いましたよ。こんな美人とはね」
この中年の男が何を生業にしているのか、黒い皮のジャンバーに褪せたジーンズの姿からはわからない。だがここへ来るという事は相当な稼ぎと伝手があるという事だ。私は善意で仕事はしない。それが区役所跡の男と違う所、それが私のプロとしての自負。

男は狸の様な顔をして卑屈に腰をかがめていたが、目だけが狡猾に光っていた。その目で診察室をぐるりと見回した。
「蛙や蛇を煮る大釜がありませんな」
愚かな、絵本に出て来る様な魔女がいてたまるものか。あれはお伽話の中だけの事、現代ではもっと別の方法が幾らでもある。

「ご用件は?」
いくら不機嫌な声を出しても、この手の人間には通じないだろう。男はもそもそと皮ジャンの前をひろげた。けたたましい女の叫び声が響いた。男の胸に醜い顔が盛り上がっている。潰れた女の顔。声はそこから響いていた。顔は再びけたたましい声をあげた。
「こいつを何とかして欲しいんで」
「『呪詛』ね、身に覚えは?」
「さて」
すっとぼけた顔をしても騙される私ではない。
「これを消せばいいのね」
「そういう事で」
私は左手を伸ばした。顔は沈黙した。そして消えた。 男は相好を崩した。
「さすが魔女医先生だ」
「高いわよ」
「それはもう」
男は卑しい笑顔を見せて、料金を払うと出て行った。


電話が鳴った。物思いから覚めて私は受話器を取った。
「何をしやがった!」
あの男だ。
「胸の顔は消してあげたでしょ」
「俺の顔が、あの女の顔になっちまった!」
「毎日、鏡に映ったその顔にあやまるのね。自分の殺した女なんだから、そのくらいの償いはしてやりなさい」
「どうしてそれを!」
「あの顔が叫んでいたでしょ、あれは殺された魔女の怒りの言葉。整形したって無駄よ。それは呪いなんだから」
(それも私が強めてあげた。私を不愉快にした罰に)
私は電話を切った。

そう、蟇蛙もコウモリもいらない。本当に必要な道具は「憎しみ」。それがあればいくらだって色々な事が出来る。でも本来はあんな男にはもったいない技だ。破滅させるならもっと美しいものがいい。ふと白い医師の面影が脳裏をよぎる。いいえ、貴方にはそんな手は使わない。そんな生易しい事では、この憎しみを購う事なぞ到底出来はしない。何故ならこの憎しみは・・・

私はゴロワーズを乱暴にもみ消すと、バスルームへと向かった。

(終)

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