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月は夜に蒼褪めて(TIGER&BUNNY)

月は夜に蒼褪めて(LUNATIC)6

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彼の寝室の壁には、粗末なイコンがかけられていた。


薄い木の板の表面はささくれ、浮き彫りにされた聖母子に塗られた色も剥げかけている。堅い表情の聖母の目は虚ろで、抱かれた救世主も人の世の罪の重さにすでに疲れ果てているように見えた。


父の家に代々伝わるもので、子供部屋にもかけるのが習わしだという。幼いユーリにはイコンは恐ろしいだけのものだった。彼は父に訴えた。
「あれ、怖いよ」
「何を言うんだ。お前は私の子だ、そんな弱虫のはずはない」
父は高らかに笑った。あの頃の父は自信に満ちあふれていた。最初のヒーロー、子供達の人気者。次々と悪人を退治し市民を救う無敵の英雄。ユーリは本気で父の力を信じていた。ユーリは毎日イコンをにらんだ。
(怖くない、僕はパパの子だ)
聖母は彼には興味なさげに遠くを見ていた。神の子は薄笑いを浮かべていた。


学校に通うようになると、イコンは壁の模様の一部に過ぎず、ユーリに特別な感慨を抱かせるものではなくなった。父の栄光もテレビ局の演出であると知った。父は万能ではなく、その限られた能力すら徐々に失われていく日々を送っていた。父は酒に溺れ、母にもユーリにも怒鳴り散らした。母は毎日のように殴られて生傷が絶えなかった。止めに入ったユーリも暴力を受けた。テレビの中では、父は相変わらず弱きを助けるヒーローだった。だが家では抵抗出来ぬ妻と子に当たり散らすだけの男だった。ユーリは失望の中にいた。


ふと壁のイコンが目に付いた。無気力な聖母の顔が母に見えた。すがりつく御子の顔が何かをあざ笑っているように見えた。ユーリはまじまじとイコンを見つめた。彼は何を笑っているのだろう。耐えるだけのママを?自分すら救えずに人を救うふりをするパパを?それとも、見て見ぬふりをしている僕を?


パパの怒鳴り声がする。ママを殴る音がする。


ユーリはそっと車庫を覗いた。パパが拳骨を振り上げている。ママの顔が腫れあがっている。パパは苦しい、ママも苦しい、僕も苦しい。苦しみから解放してあげたい、苦しみから解放されたい。この悪夢のような日々を終らせたい。せめて逃げるだけの僕の日々を。


ユーリは父に飛び掛った。母を殴る手を掴んだ。炎は青く燃え上がり、父の拳を青く燃やした。父は苦痛の叫びを上げた。母は自分よりも父の痛みを心配した。父は大きな手でユーリの顔を掴んだ。息子すらも殺そうとした。彼には必要ないのだ、息子という存在は。必要なのは力だけ。その力は、今はユーリの中にあった。ユーリの痛み、誰かの痛み、家族の痛み、他人の痛み、すべてを燃やし尽す炎が、青くユーリの目から燃えた。


パパの全身が燃え上がる。苦痛に呻く声がする。パパの大きな身体が床に崩れ落ちる。ママの悲鳴が木霊する。僕は見て見ぬふりをやめた。僕は裁きを行なった。ママを苦しめ、僕を苦しめた悪を滅ぼした。これで解放される、パパもママも僕も。偽りの正義から、偽りの日常から、偽りの英雄から。無気力な聖母と神の子が嘲笑う世界から。


だが、次の悪夢はすぐ始まった。


(To be continued,may be....lunatic.)



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