スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←月は夜に蒼褪めて(LUNATIC)4 →月は夜に蒼褪めて(LUNATIC)6
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


FC2 Blog Ranking 小説ブログランキング
  • 【月は夜に蒼褪めて(LUNATIC)4】へ
  • 【月は夜に蒼褪めて(LUNATIC)6】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

月は夜に蒼褪めて(TIGER&BUNNY)

月は夜に蒼褪めて(LUNATIC)5

 ←月は夜に蒼褪めて(LUNATIC)4 →月は夜に蒼褪めて(LUNATIC)6
彼はビーツが嫌いだった。血の色に似たスープが嫌いだった。


母は良くビーツが入ったスープを作った。父の大好物だったから。だから彼は嫌いだとは言えなかった。赤く染まったスープを飲み込むのは、彼にとって苦行に等しかった。急いで飲み込んだ熱く赤い液体が喉を通る時、彼はいつも罪を飲み込む気持ちになった。母を騙しているという罪、良い子のふりをしている罪を。


母と二人の食卓は気が重かった。母には三人の食卓、父の亡霊のいる食卓。スープ皿を空にすると、彼は席を立った。胸がむかむかした。彼が歩き出しても、母は気にしなかった。傍らの席の父の亡霊と話すのに夢中だった。バスルームで彼は吐いた。飲み込んだ罪をすべて。赤い液体に、彼の目から落ちた涙が混じった。
(いつまで続くんだ、こんな・・)


「僕はビーツが嫌いだ。ママのスープも嫌いだ。でもママには言わない」
「それが、君の罪なのかい」


老人は灰色にけぶる目でユーリを見た。もっと話してごらんとその目は言っていた。初対面のはずなのに、彼は老人をずっと知っていたような気がした。懐かしささえ覚えた。ユーリの中で、何かが開いた。彼は忌まわしい日の記憶を話し出した。殴る父、殴られる母の悲鳴、青く燃えた手、焼けていく身体、何もかも思い出せる限り。老人は黙って聞いていた。彼は自分が途中で泣き出すと思っていた。だがすべてを話し終わった時、彼の目は乾いていた。


しばらくの沈黙の後、ユーリは老人に尋ねた。
「僕を、警察に突き出す?」
「どうしてだね」
「僕は、人殺しだ」
再び老人は彼をじっと見た。
「君はどうしてお父さんに向かっていったんだね」
ユーリはあの時の恐怖と戸惑いが蘇って来る気がした。ママの悲鳴、悪を見過ごしてはいけないと教えてくれたパパが、悪そのものに見えた落胆と絶望。
「・・聞こえたんだ」
「聞こえた?」
「僕の中で、何かが・・僕の身体の奥の方で」
ユーリの細い身体が震えていた。彼は両腕で自分の身体を抱きしめた。
「僕は、それに従った」


老人は微笑んだ。ユーリの肩に手を置き、頷いた。


辛く孤独な日々の中で、あの時ほど安らいだ時はなかった。老人の腕の中で彼は泣いた。許される日は来ないと解っていた。だが償いの機会は与えられた。それがこの力の意味。あの時、老人が何を語り何を伝えたのかは、曖昧な記憶の底に沈んでしまった。


覚えているのは、老人が、彼の炎を「裁きの炎」と呼んだ事だけであった。



(To be continued,may be....lunatic.)



小説ブログランキング
FC2 Blog Ranking
関連記事


FC2 Blog Ranking 小説ブログランキング
  • 【月は夜に蒼褪めて(LUNATIC)4】へ
  • 【月は夜に蒼褪めて(LUNATIC)6】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【月は夜に蒼褪めて(LUNATIC)4】へ
  • 【月は夜に蒼褪めて(LUNATIC)6】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。