夜は銀色に流れる

月のない夜も 満月の夜さえも 世界は半分隠されている。 ここで語る偽りも いつか真実とすりかわる時が 来るかもしれない。

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一輪の花~Epilogue~

一輪の花(BLEACH)

浮竹の臥せる雨乾堂を訪なう者があった。

白き孤高の影は、傷心の浮竹の枕元に座した。
「愛する者を失った哀しみ、私にも良くわかる」

浮竹は目を閉じていた。
やつれた面差しを、その者は深いまなざしで見下ろした。
「時が経てば、その哀しみが癒えるなどと、私は言わぬ」

明り取りの障子から射す光が、美しい横顔を照らしていた。
「残された我等は、その面影を胸に生きる事しか出来ぬ」

その者は立ち上がった。
「無理に忘れずとも、良いのだ・・」
首に巻かれた薄布を翻し、その者は出て行った。

浮竹の目は閉ざされたままであった。
その目から、一筋の涙が耳の方へ流れて、落ちた。


(終)

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一輪の花(浮竹十四郎)第八話

一輪の花(BLEACH)

浮竹が吼えるように叫んだ。
「藍染!」
藍染は笑みを浮かべた。
「取るに足らぬ小さな棘でも、取り除いておくに越した事はないからね」
浮竹は千雪の身体を抱いた腕に力を込めた。

京楽はからかうような口調で言った。
「いいのかい、ボスがこんな所にのこのこと出て来て」
蔑みのまなざしで、藍染は京楽を見た。
「ここには、私を脅かすものなどない」
「どうかな」
宙に踊りあがった京楽の死覇装がたなびき、その手は斬魄刀を抜いていた。藍染の前に一体の破面が立ちはだかり、京楽の刃を受け止めた。
「ウルキオラ、女が先だ」
藍染が言った。

京楽とウルキオラの間にヤミーが割って入った。
「お前は、俺が潰す!」
京楽はヤミーの太い腕をかわした。口元の笑みは消えていなかった。
「やってみろ、デカいの」
次々に繰り出されるヤミーの拳を、京楽は二刀一対の斬魄刀で受け止めた。他の破面達も降下して向かって来た。
「やれやれ、面倒な事はゴメンこうむりたいんですがね」
浦原はつぶやいた。
「啼け、紅姫」
半身を砕かれた破面が地面に叩きつけられた。

浮竹の腕の中で千雪が身じろぎをした。見開いた目が浮竹を見上げた。浮竹は千雪の顔を覗き込んだ。
「千雪、大丈夫か」
浮竹は愛しさを込めて言った。
「はい、十四郎さま」
藍染はそれを聞きつけた。
「ほう、お前の女か、浮竹」
浮竹は顔を上げ、宙の藍染を睨みつけた。

浮竹の胸の中に何かが切れたような感覚が走った。
「・・ぐ、ぐほっ!」
千雪の胸に紅い花が散った。ウルキオラの手が千雪を掴んだ。阻止しようとした浮竹は、身体を折り曲げ、咳込んだ。
「ぐ、ぐほっ!こ・・こんな時に・・ぐほっ!」
口元を押さえた浮竹の両手の指の間を鮮血が伝った。

奪い取られた千雪の義骸が砕け散った。千雪の本体をウルキオラは抱え込んだ。ウルキオラは宙を駆け上がり、藍染の手に千雪を渡した。
「姉妹揃って私の手にかかるのも、何かの縁だろう」
「藍染!やめろ!」
浮竹は叫んだ。千雪の身体を藍染の片手が貫き、千雪の背中から藍染の手が突き出ていた。びくびくと千雪の身体が痙攣した。
「千雪!」
己の血に染まった手を浮竹は空しく宙に差し伸べた。
「十・・四郎・・さ・・ま」
千雪の身体は塵の如く飛散し、消えた。

「千雪・・ぐほっ!」
再び咳込んだ浮竹は血を吐き続けた。愛する者を救えなかった罰の如くに。死神の姿となり他の破面と戦っていた一心は、破面の一体が咳込む浮竹に向かうのを見た。今の一心には完成された破面二体を相手にする余裕はなかった。

「ぐぇぇっ!」
浮竹の背後で悲鳴があがった。浮竹が振り向くと、霊子の矢に射抜かれた破面がそこに転がっていた。その向こうに竜弦が孤雀を構えていた。竜弦は更に宙に矢を放った。藍染は身軽に避けた。
「滅却師か、これはますます面白い」
次々に放たれる矢を避けながら、藍染は楽しそうに笑った。そして天空高くその姿は消えた。藍染の後を追い、破面達も夜空へ消えた。

浦原の姿は何処へか消えていた。義骸に戻った京楽は浮竹に肩を貸した。現れた門を通り、二人の姿も消えた。

歩き始めた竜弦の背中に、一心は言った。
「奴が、すべての元凶らしいぜ」
竜弦は硬い声で言った。
「係わるつもりはない」
一心は一護達には決して見せた事のない、悲痛な面持ちをしていた。
「たとえお前がどう思おうと、戦いは始まっている」
竜弦は立ち止まった。しかし背中を見せたままであった。
「興味はない」
竜弦は空を仰いだ。
「だが・・見逃す訳にはいかん時も、あるかも知れんな」
一心の顔に微かな笑みが過ぎった。そして彼も冷たく月の輝く空を見上げた。

たった今、一輪の花が散った空を。


(続く)


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一輪の花(浮竹十四郎)第七話

一輪の花(BLEACH)

「最後の滅却師、石田竜弦・・ですね」
呼ばれて竜弦は振り向いた。一心の隣にふたつの影が立っていた。浮竹と京楽である。二人共背広姿の義骸である。浮竹は頭を下げた。
「部下を救っていただき、ありがとうございました」
竜弦は眉をひそめた。
「死神と話すつもりはない」
浮竹は手にしていてた滅却師十字を差し出した。
「これは貴方の物ではありませんか。今の霊圧とこれに残っていた気配が似ていました」
竜弦は浮竹の手にある物を見たが、何も言わなかった。
「二十年前に殺された千雪の姉が持っていた物です」
一心の顔に驚きの影が走った。竜弦の表情に変化はなかったが、ゆっくりと浮竹の方に歩いて来た。そして浮竹の手から滅却師十字を受け取った。
「滅却師の持ち物が、死神の手元にあるのは不愉快だからな」

浮竹は一心の背から千雪の身体を自分の腕に抱いた。その様子に、他の者達は千雪への浮竹の想いを感じ取った。竜弦は目を逸らせた。
「お世話になりました」
浮竹はもう一度竜弦に頭を下げた。
「死神に礼を言われる筋合いはない」
突き放す様な言葉であったが、その語尾に微かな震えがあった。竜弦は再び浮竹達に背を向け歩き出した。

家に入り、灯もつけないままに、竜弦はソファに仰向けに倒れこんだ。人には見せずにいたが、千雪への治療と今の戦いでかなりの霊力と体力を消耗していた。千雪の残した百合に似た香りが竜弦を包み込んだ。片手をだらりと床に下げ、滅却師十字を握ったもう片方の手を額に押し当てた。
「紫遠(しおん)」
ため息と共に竜弦の唇から漏れたのは、千雪の姉の名であった。

「貴方にもご迷惑を」
浮竹は一心に言った。
「俺は何もしとらん」
一心はにやりとして言った。
「部下を大事にしろや」
「はい、ありがとうございます」
京楽が呼びかけた。
「おい、門が開くぞ」
宙に現れた門が左右に開き始めていた。二人は軽く一心に会釈をして、その中に入っていこうとした。
「ああ!入っちゃ駄目っス!」
いきなり二人を突き飛ばそうとした者があった。二人は後ろへ飛び、着地した。門は黒く歪み、空間にねじれこむようにして消えた。
「罠っスよ!」
浦原喜助が門の消えた方角を見ながら言った。
「罠だって?」
京楽は言った。浦原は肩をすくめた。
「その義骸がちゃんと働いてくれれば、こんな事にはならなかったんスが」
一心が言った。
「やっぱり、アンタか」
「いやぁ、その時が来るまで、あの中で寝てもらって、うちの地下にでも隠しておこうと思ったんスがね。アタシらの迎えが行く前に作動したようで」

皆の頭上から聞き覚えのある声がした。
「相変わらず余計な事ばかりする男だな、浦原喜助」
満ちた月を背に、数体の破面を従え、空に浮かんでいるのは・・浮竹と京楽の目が鋭くなった。帽子の影で浦原の目が光った。


(続く)


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一輪の花(浮竹十四郎)第六話

一輪の花(BLEACH)

「おぬしは何をやっておる」
猫の夜一は不機嫌だった。畳にカリカリと爪を立てた。傍らに座り込んだ浦原喜助は帽子に手をやった。
「いやぁ、ちょいとした手違いがあったんスよ」
浦原は脱いだ帽子のほこりを払いながら言った。
「すぐに保護するつもりだったんスが」
「向こうでも、あやつを尸魂界内の刺客から逃すつもりで、現世に送ったのじゃろうがな」
浦原は帽子を被り直した。
「こちらも安全というわけではないっスからねぇ」
「どうするつもりじゃ」
「どうするもこうするも・・今は成り行きを見守るしか」
夜一は呆れたように押し黙り、丸くなって目を閉じた。

十三番隊の隊首室に仙太郎と清音が走り込んで来た。浮竹は部屋にいた。滅却師十字を手に物思いに耽っていた。清音が勢い込んで言った。
「浮竹隊長!瀬能の霊圧を感知したそうです」
仙太郎が続けた。
「やはり、空座町でした!」
浮竹は立ち上がった。
「私が行こう」
清音が両手を広げて遮った。
「だ、駄目ですよ。そのお体で穿界門を通るなんて、無茶です」
浮竹はいつもの温厚な顔で二人を見たが、その声には断固とした響きがあった。
「私の部下だ、私が迎えに行く」
歩いて行く浮竹の後ろを、二人は慌てて追って行った。

いつの間にか浮竹と肩を並べて歩く者がいた。華やかな女物の着物が翻った。
「一緒に行ってやるよ」
「京楽」
京楽春水は後ろを振り返り、二人に言った。
「だから、心配するな」
浮竹は前を見たまま、小声で言った。
「すまん」
「たまには、現世の花も見たくてね」
いつもの様に飄々と、京楽は言った。

竜弦は表へ出た。一心も続いた。空の気配は、はっきりとこちらへ向かって降りて来た。仮面から半ば露出した大きく歪んだ顔、長く引き伸ばされたような手足。それはただの大虚ではなかった。
「破面か」
一心がつぶやいた。
「その女を渡せ」
破面は霊力がある者には聞こえる声で言った。軋んで耳障りな声だった。空を見上げて竜弦は言い放った。
「断る」
しゅうしゅうと長い舌を宙に振り回し、それは笑った。
「たかが人間が、何を言う」
次の瞬間、うねる舌が根元から吹き飛んだ。悲鳴が空一杯に響き渡った。竜弦の手には孤雀があった。
「滅却師か!」
破面は長く変形した腕を伸ばし掴みかかろうとした。竜弦の姿が消えた。霊子の流れに乗り、高速で移動したのだ。破面の背後に竜弦はいた。
「たかが人間だが」
霊子の矢をつがえた孤雀を手に竜弦は言った。
「貴様如きには負けん」
放たれた矢が破面の身体を貫き、破面は消滅した。

何事もなかったかのように地面に降り立った竜弦を見て、千雪を背負った一心が言った。
「お前が、死神を守るなんてな」
「馬鹿を言うな」
竜弦は一心にくるりと背を向けた。
「私は、不愉快な物を掃除したに過ぎん」
そして自分の家に向かって歩き出したその背中に声をかけた者がいた。
「お待ち下さい」
白く長い髪が、夜風になびいていた。


(続く)


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一輪の花(浮竹十四郎)第五話

一輪の花(BLEACH)

「喜んで勝利の為の生贄になると、あれは承知した」
山本翁の言葉に呆然として浮竹はつぶやいた。
「そんな・・」
「あれの姉が生きていれば、こんな事をさせずにすんだのじゃが」

千雪には姉がいたと言う。王属特務に属していた為、護廷十三隊の浮竹には縁のない人物であった。彼女の斬魄刀も千雪と同じような能力があり、絶大なる霊力を有していた彼女は卍解も会得していた。
「20年前に殺されたのじゃ、犯人は不明のままだがの」
老人は手にした物を浮竹に差し出した。
「これが彼女の遺品じゃよ」
浮竹はそれを受け取った。十字架のついた鎖だった。
「滅却師十字ではありませんか」
老人はうなずいた。
「彼女の最後の任務は滅却師に関する事だった。だが殺されたのは尸魂界内で、滅却師の仕業とは考え難い」
本来は人間である滅却師が尸魂界に来る事はまず不可能である。そしてその当時すでに少数であった彼等は厳重な監視下に置かれていた。
「今にして思えば、藍染の手の者だったやも知れぬ」
老人は深く椅子に沈み込み、ため息をついた。
「奴の手の者は、いまだ尸魂界のいたる所におる。我等の動きが漏れておるようじゃ」

玄関で靴を脱ぎながら、一心はわざと陽気な声で言った。
「まさか、お前から連絡をもらうとはな」
軽口を叩く一心を、竜弦は眼鏡の奥からじろりと見た。
「義骸の事は、お前の方が詳しいだろう」
竜弦のネクタイのゆるんだ胸元を見て、この男にしては珍しい事だと一心は思った。

リビングのソファに横たわる千雪は、先程と変わった様子はなかった。着物は直されていた。
「彼女か?」
「ああ」
一心は千雪の顔を見て、はっと息を呑んだ。
「おい、こりゃあ・・」
一心の言葉を遮るかの如く、竜弦は激しい口調で言った。
「違う、妹だ」

一心は千雪の側に屈み込んだ。竜弦は脇に立っていた。一心の手が千雪に触れると、竜弦の眉のあたりに不快の色が走った。だが何も言わなかった。
「こいつは、早く出してやらんといかんな」
一心はこの義骸が特殊である事にすぐに気付いた。そしてこのような細工をする者の見当もついていた。
「方法はあるのか」
「ある」
一心は千雪の霊圧が変化していくのを感じた。
「お前の仕業か?」
一心が問うと、竜弦はうなずいた。
「ああ、霊力を活性化する様に刺激した。ここで死なれては迷惑だからな」

空座町の夜の空に亀裂が走った。
ざわついた霊圧が広がった。

一心も竜弦もそれに気が付いた。
「近いな」
一心がつぶやいた。竜弦は千雪を見た、そして一心を見た。
「こいつを連れて行け。助かる方法があるなら、そうしてやれ」
「わかった」
二人は霊圧の主がここに向かっているのを感じていた。狙いは千雪だと悟っていた。一心は千雪を背に担ぎ上げた。竜弦は先に立ち、玄関の扉を開けた。見上げると上空に大虚がいた。


(続く)


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